椿の観音さま

久保田です。
以前より活動を気にして下さっていたうかぶLLCの三宅航太郎さんが、『三徳山三佛寺 写真集』(サン文庫、昭和58年3月25日発行)をわざわざ届けて下さいました!
私は三宅さんと5年ぶりの再会です。嬉しい!

そして、ページを開くと、なんと長谷川富三郎さんの作品が挟まっていました。
中にはこう記してあります。
『椿寿観音 手摺  二月堂椿をもっていただいて 椿寿(ちんじゅ)観音と呼ばせてもらいます  長谷川富三郎』

二月堂とは奈良県奈良市にある東大寺の仏堂です。奈良時代に創建され、国宝に指定されています。長谷川富三郎さんは『修二会』、別名『お水取り』の十一面悔過法という日本の仏教寺院で行われる法会のひとつにも実際参加しながら、修二会シリーズの大作を制作されています。お水取りは毎年3月1日から14日まで本行が行われ、練行衆が2月25日の「花ごしらえ」の日に作った造花の椿が二月堂本尊の、十一面観音に捧げて祭壇に飾られます。

倉吉、打吹山の椿については中村さんが記事で既に書いていますが、椿は倉吉の木です。

倉吉を愛した長谷川富三郎さんはこの東大寺二月堂の椿たちから、倉吉の長谷寺の奥でしずかに土地を見守り続けてきた十一面観音さまと、打吹山で葉を輝やかせる椿の瑞々しさに想いを馳せ、東大寺に居ながらまるで地面の奥の水脈と倉吉の大地が繋がっているように感じずにはいられなかったのではないでしょうか。その言葉にできない畏怖の心が長谷川富三郎先生に椿寿観音を彫らせたのではないかと、今なら私も想像することができます。

この作品が挟まれていたのは、今回の滞在制作で大変お世話になっている徳吉雅人さんが撮影された三徳山の十一面観世音立像(重要文化財)のページなのもまた、素晴らしい巡り合わせだと感動が止まりませんでした。どこに居てもこの土地に想いを馳せざるを得ないのは、植物や観音様やお地蔵様の目には見えない眼差しが、昔からずっとここの空気に溶けて色濃く在り続けるからではないでしょうか。

記念に、たまたま椿の造花をアマゾンで買っておいたので(役立つ日が来た!)、中村さんに椿寿観音さまをやってもらいました。

感慨深いよー
『椿マリア観音さま』
左:私が毎日お祈りしている隠れキリシタンの「マリア観音」
右:滞在先のそばに落ちていた椿
下:山陰民具で購入した螺鈿のケース
これもまた山陰民具で衝動買いした椿の菓子鉢に、水を張り(ありがとう旧倉吉水源地からくる倉吉の水道水!)まるでかつての鍛冶屋のように中村さんがカンカン叩いて作った銅の椿の葉と、椿の花を浮かばせて、祭壇めいたものを設えてみました。長谷川富三郎さんの想いも含め、この土地すべてに巡っている祈りと願いへの捧げ物として、今日はスタジオの机に飾ってお祈りすることにしてみます。

明日からの発表会場でも置いておきますので、みなさま是非想いを馳せに、私たちのスタジオへいらしてください。成果発表会となる新作展示とオープンスタジオ、みなさまのお越しをお待ちしております。

久保田

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